この夏は佐渡裕芸術監督が発掘した驚異の新星・谷口朱佳(ヴィオ ラ )に注目!
2022-2023シーズンのラストを締めくくる定期演奏会でソリストに抜擢されたのは、佐渡裕芸術監督がその才能に圧倒されたというヴィオラ奏者の谷口朱佳。恩師佐渡芸術監督とのエピソードや公演に向けての意気込みを伺いました。
——ヴィオラ奏者の道を選んだきっかけは?
私は3歳でヴァイオリンを始め、10歳でジュニア・フィルハーモニック・オーケストラに入団しました。その後師事していた松原勝也先生から「低音が良いからヴィオラをやってみたら?」と勧められ、川﨑和憲先生を紹介していただき、両方勉強するようになりました。やがてヴィオラをより深く学びたい気持ちが強くなり、高校生になる前にヴィオラ奏者を目指すことに決めました。
川﨑先生は多くのことを惜しみなく教えてくださり、私は音楽に留まらず芸術や文化等いろいろなことに興味を持つようになりました。今は、音楽を追究するためヨーロッパで学ぶことを目指しています。
——ベルリン・フィルを訪問されたそうですが、現地で体験した印象的な出来事をお聞かせください。
2022年の夏、とにかく一度ヨーロッパに行ってみたいと思いながらもコロナの影響で計画が立たない中、高校2年生の頃にレッスンを受けたベルリン・フィルのヴィオラ奏者、ワルター・ケスナー先生から承諾いただいて、ベルリンを訪問することになりました。現地ではレッスンを受けただけでなく、ベルリン・フィル大ホールでオーケストラメンバーに演奏を披露したり、ストラディヴァリウスの試奏会に連れて行ってもらったり、多くの経験をしました。一番驚いたのは、ケスナー先生から突然電話があり、急遽出られなくなった方の替わりにベルリン・バロックゾリステンのプロダクションに出てほしいと言われ、飛び入り参加したことです。
——佐渡芸術監督が「谷口さんの演奏を初めて聴いたときはびっくりした」とおっしゃっていました。
私はヒンデミットの作品が好きで、川﨑先生から「君はヒンデミットの曲になると急に生き生きするね」と言われたほどです。
佐渡さんにお会いした時も、ヒンデミットの無伴奏ヴィオラソナタOp.25-1を聴いていただきました。佐渡さんは私が弾いている間、スコアを見ながら小さく指揮を振っていらっしゃいました。演奏後、「よく弾くね。君、本当に高校生?」と言われたことが印象に残っています。
——室内音楽第5番の魅力や、ヒンデミットが優れたヴィオラ奏者だったからこその作品の特徴や難しさをどう感じますか?
ヒンデミットは他の楽器の曲も書いていますが、ヴィオラに関しては特にあらゆる工夫を凝らして作品を作り上げています。本人はわかりやすく親しみやすい曲だと思っていたようですが、弾いているほう、聴いているほうにとって、非常に難解な曲に仕上がっているように感じます。
ヒンデミットが好んで弾いていたという室内音楽第5番を、私は今回初めて弾きます。音の動きが印象的で、至る所にユーモアを感じる、魅力的な作品です。
——同年代であるPACとの共演で楽しみにしていることは?
佐渡さんが指揮をされている公演を聴いた時、それぞれのパートが自由に弾いていながら、同時に音が集まって一つの作品になっている様子が印象的でした。今回は、チェロ、コントラバスと管楽器による室内オーケストラと演奏する作品で、それぞれのパートに独自の役割があります。私と年齢が近い楽団員の方とのやりとりが楽しみです。
《プロフィール》
谷口 朱佳(ヴィオラ) Ayaka Taniguchi, Viola
3歳よりヴァイオリン、14歳よりヴィオラを始める。これまでに、ヴィオラを川﨑和憲、ワルター・ケスナー、恵谷真紀子、佐々木亮、中村洋乃理、中村翔太郎、百武由紀、今井信子各氏、ヴァイオリンを松原勝也氏に師事。
第75回TIAA全日本クラシック音楽コンサートにて優秀賞、第74回TIAA新人演奏会オーディションにて優秀新人賞を受賞。2020年東京国際芸術協会芸術公演助成事業ソロリサイタル、2021年音楽ネットワーク「えん」主催ソロリサイタルを行う。
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を単独で訪問し、自身の演奏披露、ベルリンバロックゾリステンプロジェクトへの参加等様々な研修を通して音楽の幅を広げ、同楽団メンバーから高い評価を受ける。また、第38回霧島国際音楽祭マスタークラス、丹波篠山2022年ヴィオラマスタークラス、小野文化財団主催「ヴィオラ塾2022」に参加する等、音楽活動の研鑽を積んでいる。
東京藝術大学音楽学部3年次在学中。10⽉よりフランクフルト⾳楽・舞台芸術⼤学タベア・ツィンマーマン氏のクラスに留学予定。
インタビュー・文:高坂はる香(音楽ライター)
兵庫芸術文化センター管弦楽団 第143回定期演奏会
佐渡 裕 ブラームス第2番
【日時】2023年8月4日(金)・5日(土)・6日(日)各日3:00pm開演
【会場】兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
【曲目】ブリテン:歌劇「ピーター・グライムズ」より「4つの海の間奏曲」、ヒンデミット:室内音楽 第5番、ブラームス:交響曲 第2番
【出演】指揮:佐渡 裕
ヴィオラ:谷口 朱佳
管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団
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