【クリスティアン・アルミンク インタビュー】PAC定期6度目の登場でブルックナーに挑む
第157回定期演奏会の指揮はクリスティアン・アルミンク。PAC定期公演での登場は6度目となります。
――これまでPACと共演されてどんな印象をお持ちですか?
私が最後にPAC定期に出演したのは2022年で、ベートーヴェンの交響曲第7番で共演しました。メンバーのエネルギー、その温度の高さ、責任感と情熱に強い感銘を受けました。私の人生の中でも特別で記憶に残る瞬間でした。
PACは常にメンバーが変わるので、毎回、新たな活気をもたらす新しい顔ぶれとの挑戦になります。音楽が新しくフレッシュで、生き生きしている印象がありますね。
――前半にはトロンボーンの中川英二郎さんによる「Trisense」を取り上げます。
彼は優れたトロンボーン奏者であり、とてもフレンドリーなアーティストです。今回が初めての共演ですが、彼とのコラボレーションでPACと「Trisense」という作品に出会うことをとても楽しみにしています。
――後半はブルックナーの交響曲第7番です。作品の魅力はどのようなところに感じますか?
ブルックナーの7番は、音楽家と聴衆に宇宙全体を開いて見せてくれる作品です。大変高度なパワーを持つ宗教的感情と結びついた、別の世界に導いてくれます。
私たちは時に人生で苦悩を味わうことがあるかもしれません。でもブルックナーは、最後に神を信じよ、という解決策をいつも与えてくれます。とくに緩徐楽章では、容易に神とつながる感覚を得ることができるでしょう。
演奏を通じ、PACの若い仲間たちにブルックナーの美しさを伝え、この信じられないほど圧倒的な構造をもつ大きな建築、音による‶大聖堂”を一緒に造り上げたいです。
――ウィーンで活躍したブルックナーのキャラクターについて、ウィーンで生まれ育ったアルミンクさんには、共感するところがあるのでしょうか?
ブルックナーが生まれたのは、オーストリア北部のアンスフェルデンという小さな村です。彼のメンタリティは、典型的なウィーン人のそれとは大きく異なります。彼は女性との付き合いに不慣れで、社会性も不安定、そしてとても信仰心に篤い人でした。
でも私はそんな彼の音楽が大好きです!
――最後に、兵庫のお客様にメッセージをお願いします。
みなさんが目を閉じ、ブルックナーの音楽に身を任せてくれることを願っています。
疑念や失望、葛藤が色濃く特徴として現れ、しかし最終的には、信仰というものが確かな勝利をおさめる……という力強い音の世界の旅を楽しんでほしいです。
インタビュー・文:高坂はる香(音楽ライター)
《プロフィール》
クリスティアン・アルミンク(指揮)
小澤征爾らのもとで学び、ヤナーチェク・フィル首席指揮者、ルツェルン歌劇場、新日本フィル、リエージュ・フィルの音楽監督を歴任。2017年から広島響の首席客演指揮者を務め、2024年4月から同団の音楽監督に就任。
チェコ・フィル、ウィーン響、ボストン響、N響などと共演。
兵庫芸術文化センター管弦楽団 第157回定期演奏会
アルミンク ブルックナー7番
【日時】2025年2月21日(金)・22日(土)・23日(日)各日3:00pm開演
【会場】兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
【出演】指揮:クリスティアン・アルミンク
トロンボーン:中川 英二郎
管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団
【曲目】中川英二郎:Trisense
ブルックナー:交響曲 第7番
チケットのご予約・公演詳細はこちら