第38回定期演奏会 金 聖響さん 特別インタビュー

  昨年、神奈川フィルの常任指揮者に就任。これまで共演してきたオーケストラやソリストからも高い信頼と評価を得て、指揮者としてのキャリアを積み重ねている金聖響。PACと3度目の共演となる第38回定期演奏会では、指揮をするのは今回が初めてという「交響曲第7番」を含むドヴォルザークの3作品を取り上げます。自身も“挑戦”と語る今回の演奏会。公演を間近に控え、気合い十分の聖響さんにお話を伺いました!

■ PACオーケストラとは3回目の共演

  PACオーケストラには初年度の2007年から客演しています。次が2009年。2回目は、ちょうど新型インフルエンザが流行し始めた直後で、マスクが売り切れになるなど大騒ぎの時期でした。本当にお客さんが来て下さるのか、心配していたのですが、蓋を開けたら初日のマチネでも8割5分から9割ぐらい客席が埋まっていた。それからも分かるように、熱心な聴衆がこのオーケストラには付いているんだなと驚きました。
  だからこそ、他のオーケストラでは出来ないような大胆なプログラミングも可能になります。僕が指揮した演奏会も、最初の時は「4」にまつわる作品ばかりを集め、2回目は「3」の付く作品ばかり。 シューベルトの3番の交響曲なんて、かなりマニアックな作品だと思い ますが、そういう冒険が可能になります。
  実際の演奏でも、例えば2007年のメンデルスゾーン「イタリア」の時は、チェロ以外全員が立って演奏するという試みを取り入れました。また、出来る限り弦楽器のヴィヴラートをかけないスタイルも一緒に取り組んでくれました。そういう柔軟性がオーケストラにありますね。

■ 瞬発力があり、より高みを目指す意志も強い

  PACオーケストラの個性ですが、まず瞬発力があるというのが僕の印象です。こちらが言ったこと、意図した音楽に対して、即座に反応してくれる。これはヴェテランの多いオーケストラでは難しいことです。若いメンバーが多く、しかもインターナショナルな顔ぶれなので、普通の日本のオーケストラにはない「食いつき」があります。
  そして、リハーサルを重ねるにつれてどんどん音楽が良くなって行く。それもゆるやかに上がって行くのではなく、階段を駆け登るような感じでポンポンポンと上がって行くんです。実際の演奏会も3日間本番がありますから、それが続く。それは、このオーケストラの団員たちの真摯な意欲が作り出す成 果のひとつです。

■ 初めて指揮するドヴォルザークの第7番

  今年はオール・ドヴォルザーク・プログラムです。実は第7番の交響曲を指揮するのは今回が初めてです。指揮者としてはこれまでドイツ・オーストリアの作品をメインに据えていたので、東欧の作品を振るというチャンスはなかなか無かった。なので、新しい挑戦ですね。
  ドヴォルザークの交響曲と言えば、第8番、第9番「新世界より」が有名で演奏頻度も高いですが、この第7番も名曲です。あまり演奏されないのが不思議なぐらいですよね。派手さはないけれど、ドヴォルザークらしい歌の豊富さ、そして東欧らしいリズムがあり、作曲家自身がそ こに込めた想いも充分に感じられる作品です。

  そして今回の演奏会で最も難しいのはチェロ協奏曲でしょう。これはチェロ奏者にとっては最も有名で、しかも技術的な要求が大きい作品です。オーケストラとのアンサンブルも大切な要素で、いかにソリストとオーケストラが息を合せて音楽を作って行けるか、そこに成功の鍵があ ります。チェロのメネセスとは初の共演ですが、世界で活躍している名手なので、きっとオーケストラをよく聴き、またオーケストラに乗って 雄大な音楽を作り出してくれるでしょう。
  若いPACオーケストラとの共演はいつも楽しい経験となるので、今回も充実した時間を過ごせるだろうと期待しています。

聴き手 : 片桐卓也(音楽ライター)

第38回 定期演奏会
聖響のドヴォルザーク!
2010年 12月 17日(金) ・ 18日(土) ・ 19日(日)
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